リセールバリューが下がっているエリアも
首都圏でも一部でリセールバリューが下がっているエリアが出てきてる。
「東京カンテイのデータでは、首都圏にある駅のうち10年前に分譲されたマンションのリセールバリューが下がっているのは9駅。山手線の内側は概ね1.5倍以上、都心5区だと2倍くらいになっています。下がっているのは本川越駅(西武新宿線)や東浦和駅(JR武蔵野線)などで、理由としては、分譲時に駅名につられて割高な価格が付けられていた可能性が考えられます。浦和は、さいたま市の中でも文教エリアとして住宅価格の相場は高いですが、東浦和駅は住所としては浦和区ではなく、駅名に『浦和』という地名が入っているため、浦和区の相場に基づいて、本来の実力以上の値付けがされていたのかもしれません。
同じく埼玉県でいえば、例えば大宮駅周辺は人気エリアで価格が高いものの、一駅離れればぐんと安くなるのですが、なかには“大宮価格”で売り出されている物件があるかもしれません。ですので住宅を購入する際には、そうした値付けに騙されないように注意したほうがよいでしょう」(山下氏)
首都圏の住宅価格の下落が始まる可能性
発売から成約までの期間の長期化や一部エリアでのリセールバリューの低下は、首都圏の住宅価格の下落が始まる兆候と捉えることはできるのか。
「年内、秋頃から冬頃にかけて値下がりが始まる可能性があると考えています。首都圏のマンションは駅から徒歩5分圏内であることが資産価値を維持するための条件ですが、徒歩5分圏内ではなかなか確保しづらくなっています。徒歩10分圏内まで選択肢を広げる人が増えていますが、戸建ては別として、マンションであれば徒歩5分圏内にこだわることをお勧めしています。
東日本不動産流通機構が公表しているデータによれば、過去1年間、新規登録価格、つまり売り出し価格は右肩上がりが続いている一方、成約金額はほぼ横ばいで、その差が徐々に開いており、成約価格が新規登録価格を1割ほど下回っているケースが増えています。要するに、それだけ値引き交渉が行われ、売主や販売業者が値下げを受け入れているということなんです。販売業者は売り出しから成約までの日数が長くなってきていることもあり、かつ『こんな高い価格では買えません』という人が増えているので、年内には成約価格もそろそろ頭打ちになって、下がっていくと思われます。
数年前まで新築マンションは『買った瞬間に2割下がる』というのが常識でしたが、ここ数年は急速に価格が上がって、それが通用しなくなっており、今は局地バブルといえる状況です。それがそろそろ今年から来年にかけて終わる、通常の状態に戻り始める可能性があります。ですので、これから買う人は『いつまでも上がる』と思って買わないでください。東京23区で駅から徒歩5分以内のタワーマンションや大手不動産会社が手掛ける大規模マンションは別として、そうでないごく普通の小規模物件や大手不動産業者以外が手掛けるマンションは下がっていくかもしれません。
また、建築費が上がっているので、これまでと同じ価格レベルを維持したまま、70平米を65平米にしたり、設備のスペックを落としたり、天井の高さを2.5mから2.45mに低くしたりと、わかりにくいところで、こっそり物件のレベルを下げるということが、すでに行われ始めています。先日見学にいった200戸クラスのマンションでも、キッチンのディスポーザーがありませんでした。こういったかたちで、売り出し価格を維持したまま、実質的には物件の価値が下がるということが広がるかもしれません」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=山下和之/住宅ジャーナリスト)