●この記事のポイント ・新築マンションの発売から成約までの期間が徐々に長くなり、100日を超えた ・一部ではリセールバリューが購入時より低下するエリアも出始め ・専門家は「年内の秋頃から冬頃にかけて、値下がりが始まる可能性がある」と指摘

 値上がりを続けてきた首都圏のマンションに異変が起きている。新築マンションの発売から成約までの期間が徐々に長くなり、一つの目安となる100日を超えた。加えて、一部ではリセールバリューが購入時より低下するエリアも出始めているという。専門家は「年内の秋頃から冬頃にかけて、値下がりが始まる可能性がある」と指摘する。住宅販売市場に起きている変化について追ってみたい。

●目次

発売から成約までの期間が長くなりつつある理由

 発売から成約までの期間が長くなりつつある理由について、住宅ジャーナリストの山下和之氏はいう。

「価格が高くなりすぎているなど、買う側にとっていろいろ問題が生じているということではないでしょうか。価格が高くなれば、多額のローンが必要になり、ローンの手当てに時間がかかる、場合によってはローンが下りない。例えば5000万円のローンを組む予定だったのが、それでは足りなくなって6000万円組まないと買えなくなり、銀行は『あなたの年収では6000万円は組めません』と判断するケースなどです。そうなると購入検討者は自己資金を増やす必要があり、親に頼み込んだり他の銀行に貸してくれるよう交渉したりと時間がかかる。場合によっては、購入をやめたり、価格を下げて物件を再検討したり、エリアを変えるといったことが必要になってきます。たとえば、築20年の中古マンションを買おうと思っていたけど、価格が上がって買えないので、築30年、40年の物件まで選択肢を広げてみるという人もいるでしょう。

 東日本不動産流通機構が公表している築年別の成約価格をみると、築5年未満の築浅マンションのほうが、新築マンションより高いという例も出ています。なぜかといえば、新築マンションの供給が少なくなって、エリアによっては新築マンションが出てこないので、新築の相場よりも高い価格で取引されるような現象が起きているのです。ですが築10年を超えると段階的に下がってきて、築30年以上になると首都圏でも2000万円ぐらいにまで下がり、築浅マンションの3分の1くらいの価格で買えるようになります。買う側は、こうしたことを検討する時間が必要になってきており、成約までの時間が長くなってきています。

 2000~22年にかけては、販売から成約までの平均期間が70~80日くらいで、ミニバブルといえる状況で住宅価格が急速に上がり、多くの人が『早く買っておかないといけない』と買い急ぐ傾向が強くなりました。ですが23~24年に入ると高くなりすぎて『もう手が届かない』ということで購入が難しくなってきています。この状況はおそらく今年も続くでしょう。

 都心の2~3億円する超高層マンションは外国人も含めた超富裕層が現金で買うので、相変わらず発売後すぐに売れます。一方で、一般の人々が買うような5000~6000万円レベルの物件は、年内に価格はほぼ天井を打って横ばいから多少下がる傾向も出てくると思いますが、それでもまだ高いので、発売から成約までの日数は長くかかると考えられます」