しかし、当時はなんと“満月”

LST-1にとって月明かりは強敵で、通常であれば観測を中止するレベルの明るさです。

それでもチームは、あえてリスクを取り、カメラの感度を調整することで観測を強行しました。

その結果、地球に届いた非常に高エネルギーのガンマ線をとらえることに成功しました。

しかもこの観測は、チェレンコフ望遠鏡による唯一のGRB 221009Aの記録であり、史上最大規模のGRB観測キャンペーンとなったのです。

見えてきた「ジェットの真の姿」とは?

ガンマ線バーストは、超新星爆発や中性子星の衝突などの際に生じる、超高速の“ジェット流”によって観測されると考えられています。

このジェットは、私たちの方向に向いていないと見えません。

だからこそ、たまたま“こちらを向いた”ときだけ観測される、非常に貴重な現象なのです。

従来、このジェットは「一様な円錐型」と仮定されることが多くありました。

まるで水鉄砲のように一直線に、同じ強さで吹き出していると考えられてきたのです。

しかし今回のLST-1による高エネルギーガンマ線の観測と、他の電波・光・X線観測を合わせた解析の結果、まったく新しい“構造”が浮かび上がりました。

中心には非常に狭くて速い「細い芯」のようなジェットがあり、それを取り囲むように、より広くて速度の遅い「外層」のジェットが存在していたのです。

このような「多層構造のジェット(structured jet)」の存在が観測的に裏づけられたのは今回が初めてで、ガンマ線バーストの発生メカニズムを考え直す大きなきっかけとなりました。

とくに、爆発の根源にあるブラックホールや中性子星などの“中心エンジン”が、どのようにしてこうした複雑なジェットを生み出すのか――今後の研究の重要な焦点となります。

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LST-1 望遠鏡/ Credit: 京都大学(2025)

今回の観測は、たまたま「史上最も明るい爆発」が起こったタイミングで、地上の望遠鏡と世界中の研究者たちが絶妙に連携したことによって実現しました。