相手からの移動や食べ残しのおこぼれ、外敵からの保護など、さまざまな恩恵を受けて生き延びているのです。
こうした習性を人間の世界に当てはめて、「人気者にすり寄るコバンザメ」などとして軽蔑の意味を込めた比喩表現として用いられることがあります。
しかしその吸着力は、“電力も化学反応も使っていない”という点で興味深いものです。
構造的な工夫だけで、水中でも強固に張り付けるという点に、MITの研究者たちは注目しました。
研究チームは、さまざまなコバンザメ種の吸盤を比較し、柔らかい表面に最適な構造を特定。
それを応用したのが、次に紹介する新型デバイス「MUSAS」です。
コバンザメからヒントを得た「胃の中でも剥がれない薬用デバイス」

MUSASは、シリコン製の柔らかいリップと呼ばれる縁部、温度で変形するラメラ(傾斜板)、そして装置全体を支える“バックボーン(背骨)”で構成されています。
これはカプセルサイズの装置で、飲み込んだ後、体温に反応して自動的に展開し、胃や腸の柔らかい粘膜に張り付くことができます。
電池やモーターなどの動力源を一切使わず、形状記憶合金の温度応答性を利用しています。
その構造はまさに“コバンザメの吸盤”そのもの。
多区画に分かれたラメラが独立して動くことで、柔らかく濡れた粘膜にも強く吸着します。

さらに、ラメラ先端のスピンル状のマイクロニードルが粘膜に浅く刺入し、物理的に保持されます。
MITの研究チームはこのMUSASを使って、いくつかの動物実験を行いました。
たとえば、魚に装着した温度センサー付きMUSASは、高速で泳いでも外れず、水中での生体モニタリングに十分耐えることが確認されました。