もし私たちが「チェーン店は高いから」とより安いサービスを探し求めて一つの店舗を通り過ぎたとしても、次に遭遇する店舗は結局、同じ企業の別のチェーン店である可能性が高くなります。
それに反して、より安いサービスを提供している競合他社の小規模な店は店舗数が少ないせいで、なかなか遭遇できません。
そうなると私たちは「どうせここをスルーしてもまた同じチェーン店が現れるだけだから、安い店を探すのは無駄足になりそうだ」と考えます。
その結果、消費者は多少高値であっても目の前の取引を受け入れやすくなるのです。

こうした消費者心理のおかげで、店舗数の多い企業は少ない企業よりも価格を高く設定できることが示されました。
この心理プロセスについて、研究者は次のような具体的シーンを挙げています。
「仮に最大手のタクシーを1台やり過ごして、少し安い他社のタクシーをあてにして待っていたとしても、結局次々やってくるのは最大手のタクシーばかりというのはよくあることです。
この事実が消費者を『待っても無駄』という状態にさせることで、最大手企業は安心して価格を引き上げることができるのです」
もちろん、ここで示されたメカニズムは価格設定を高くできる理由の一端であり、他の要因も関係しているでしょう。
例えば、有名チェーン店ならではのブランド力や品質の高さ、サービスの安定した一貫性などなど。
しかし、この店舗との遭遇率の高さは、お客さんを取り込むための重要なファクターのようです。
全ての画像を見る
参考文献
価格設定のしくみを解明 ~店舗の多い企業ほど「値上げしても客が逃げない」理由~
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/07/post-695.html
元論文
PROMINENCE AND MARKET POWER: ASYMMETRIC OLIGOPOLY WITH SEQUENTIAL CONSUMER SEARCH
https://doi.org/10.1111/iere.12704