非常に熱い飲み物をたくさん飲むと、食道の粘膜細胞が損傷を受け、長年の蓄積によって、がん発生につながると考えられています。

この関連は、約90年前から研究者によって提案されてきました。

食道へのダメージに関する知見は、主に動物実験から得られています。

2016年のマウス実験では、がんになりやすいマウスに70℃の熱湯を与えたところ、低温の水を与えたマウスよりも早く、そして多くの前がん病変が発生しました。

もう一つの仮説は、熱による食道粘膜の損傷でバリア機能が弱まり、胃酸の逆流による追加のダメージを受けやすくなる、というものです。

慢性的にダメージが蓄積すると、食道がん発症のリスクが高まります。

飲む量は関係する?

がんのリスクは、一度に飲む量や飲むスピードにも左右されます。

一度に大量に飲む方が、食道に熱損傷を与える可能性が高いのです。

ある研究では、人々が異なる温度のコーヒーを飲んだときの食道内部の温度を測定しました。

結果は、飲み物の温度そのものよりも「一口の量」の方が大きな影響を持っていました。

例えば、65℃のコーヒーを大きく20ミリリットル口に含むと、食道内部の温度は最大で12℃上昇しました。

長年にわたって大きな口飲みを続けると、細胞を損傷する持続的な熱傷害が起こりうるのです。

たまに65℃のコーヒーを小さくすする程度であれば、長期的な問題は起きにくいでしょう。

しかし何年にもわたり大量の非常に熱い飲み物を飲み続けることは、食道がんのリスクを確実に高めると考えられます。

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Credit: canva

コーヒーなどの抽出温度は非常に高く、水の沸点に近い場合もあります。

テイクアウトの飲み物は、職場や自宅に持ち帰って冷めてから飲めるように、90℃近い温度で提供されることさえあります。

アメリカの研究では、食道への熱損傷リスクと風味のバランスを考慮して、コーヒーの最適な温度を計算しました。