「絶対に真似しないでください」―死と隣り合わせの挑戦
しかし、どれだけ酸素を体に蓄えようとも、30分近く水中にいることが容易でないことに変わりはない。そして、この挑戦には命の危険が伴う。純粋酸素の過剰摂取は、めまいや痙攣、失神を引き起こす「酸素中毒」を招く可能性がある。さらに、血中の二酸化炭素濃度が気づかぬうちに上昇する「二酸化炭素中毒」のリスクもある。
「純粋酸素を使ったダイビングは危険であり、命に関わる可能性があることを心に留めておいてください」とマリチッチ自身も警告する。
彼の言葉は誇張ではない。以前の記録保持者には、著名なマジシャン、デビッド・ブレインもいたが、その記録は17分。このようなスタントに挑戦する者は少なく、無傷で生還する者はさらに少ないのだ。
ちなみに、酸素の助けを借りずに息を止めた世界記録は、2014年にブランコ・ペトロビッチが達成した11分54秒である。

(画像=画像は「ZME Science」より)
記録の先に彼が見るもの
マリチッチは、酸素なしでも10分以上息を止めることができる、まさに超人だ。彼はかつて、一呼吸で107メートルも水中を歩くという世界記録も保持していた。
しかし、彼にとって記録更新は単なる自慢のためではない。ギネスによれば、彼は今回の挑戦を「海洋保護への意識を高めるため」に捧げたという。彼が日々訓練する美しい海が、今まさに危機に瀕していることへのメッセージなのだ。
人類の極限への挑戦は、我々が直面する地球規模の課題に比べれば、あまりにも小さいのかもしれない。
参考:ZME Science、ほか
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