イエス・キリストの“奇跡”は実話だった? 聖書の「パンと魚」の謎、ついに科学が証明かの画像1
(画像=ジェームズ・ティソ作『The Miraculous Draught of Fishes』 – Brooklyn Museum所蔵, パブリック・ドメインリンク)

 わずか5つのパンと2匹の魚で5000人の群衆を満腹にさせた――。聖書に記されたイエス・キリストの最も有名な奇跡の一つが、2000年の時を経て、ついに科学の力で解き明かされるかもしれない。最新の研究が、この奇跡が単なる物語ではなく、特定の自然現象に基づいた「現実のできごと」であった可能性を強く示唆しているのだ。

聖書に記された2つの「魚の奇跡」

 イエスの奇跡の中でも、特に有名なのがイスラエルのガリラヤ湖(現在のキネレット湖)を舞台にした2つの物語だ。

 一つは「パンと魚の奇跡」。マタイによる福音書によれば、イエスはわずか5つのパンと2匹の魚を、祝福することで無限に増やし、約5000人の信者たちの空腹を満たしたとされる。

 もう一つは「奇跡的な漁」。弟子たちが一晩中漁をしても何も獲れなかった後、イエスの言葉に従って網を打つと、網が破れるほど大量の魚が獲れたという物語だ。

 何世紀もの間、これらの物語は信仰の対象として語り継がれてきたが、そのメカニズムは謎に包まれていた。しかし、最新の科学的発見が、この古代の記述に驚くべき信憑性を与えている。

科学が解き明かした「ガリラヤ湖の秘密」

 研究が明らかにしたのは、ガリラヤ湖で起こる特異な自然現象だ。この湖は、水温や酸素濃度によって水が層をなす「部分循環湖(meromictic lake)」と呼ばれるタイプである。表層は温かく酸素が豊富だが、深層は冷たく酸素がほとんどない。

 そして、特定の条件下で強い西風が吹くと、湖の表層水が東側に押しやられ、その反動で西側の深層から酸素のない冷たい水が表層に湧き上がる「湧昇(ゆうしょう)」という現象が発生する。 この現象が起きるとどうなるか。湖の魚は急激な環境変化と酸欠によって大量に死に、水面にぷかぷかと浮かび上がってくるのだ。