●この記事のポイント ・増加しているのは「高度人材」よりも「単純労働者」 ・インドネシアからの受け入れ数が増加の背景 ・先進国のなかで日本は外国人労働者の受け入れハードルが最も低い

 今年1~6月の訪日外国人数(推計値)が2151万8100人(日本政府観光局発表)となり、過去最も速いペースで年間2000万人を超えるなど、引き続きインバウンドの増加傾向が続いている。日本を訪問する外国人として増えているのは旅行客だけではない。日本の在留資格を得て就労する外国人の数は年々、増加傾向にある。専門性の高い「技術・人文知識・国際業務(技人国)」に就く、いわゆる技人国ビザを得る外国人が増える一方で、その何倍もの数の肉体労働者が受け入れられている。国籍別ではインドネシア人などの増加が目立つ。日本での就労経験を通じて日本に好意を持つ外国人が増えれば、将来的にはさらなるインバウンドの増加につながると考えられるが、現在、外国人労働者を取り巻く状況はどうなっているのか。また、現場では何が課題となっているのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

●目次

「高度人材」増加の実態

   法務省入管庁の在留外国人統計によると、技術・人文知識・国際業務といった高度人材向けの在留資格取得者は確実に増加している。ジャーナリストの出井康博氏はいう。

「2021年末が約27万人でしたが、2024年末には約42万人と、15万人程度増加しています。コ増加傾向にあるには事実だが、より注目すべきは実習生など肉体労働者の急増ぶりです」

 外国人労働者受け入れの背景には、企業にとって安価な労働力を確保できるメリットと、消費者が安い価格でサービスを受けられるメリットがある。しかし、その一方でデメリットも生じている。

「技能実習生や特定技能といった在留資格で就労する外国人労働者は、やはり低賃金で働いています。日本人の働き手がいないと言われますが、実際には働く能力のある人はいるはずです。賃金を上げれば日本人も働くはずですが、賃金が安いためやりたがらない介護などの分野で今、外国人に頼っている状況です。このまま外国人頼みが進めば、今後も賃金の上昇は抑えられてしまいます」

 さらに問題となるのは、外国人なしでは成り立たない業種の拡大だ。

「日本人がやらない仕事で、どんどん外国人頼みの仕事が増えていく。外国人なしでは成り立たない仕事が増えていくわけですが、それが良いことなのかどうかは、もう一つの議論としてあると思います」