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6年間にわたる極端な健康法で心身ともに限界を迎えていた48歳の女性に、思わぬ転機が訪れた。交通事故による骨盤骨折で3か月の入院を余儀なくされたのだ。この不運な出来事が、結果的に彼女の命を救うことになるとは、誰も予想していなかった。
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劇的な体調改善のメカニズム
病院食は、彼女がこれまで「体に悪い」と避けてきたものばかりだった。朝食の梅干しおにぎりには白米がたっぷり。昼食にはチーズや乳製品を使ったドリアやパスタが出され、夕食は肉料理が中心。さらに午後のティータイムには砂糖入りのカフェオレまで提供された。6年間避け続けてきた糖質、動物性たんぱく質、乳製品、砂糖といった「禁断の食材」のオンパレードだった。
骨盤骨折で身動きが取れない状況では、出された食事を摂るしかなかった。体重増加を心配しながらも、選択の余地はなかった。ところが予想に反して、体調は劇的に改善し始めた。あれほど苦しんでいた貧血症状が徐々に和らぎ、朝の目覚めは爽快になり、鉛のような体の重さが嘘のように消えていった。
この改善の背景には、明確な栄養学的根拠がある。白米などの糖質はエネルギー代謝に不可欠であり、脳の唯一のエネルギー源でもある。肉類に含まれる動物性たんぱく質は、植物性たんぱく質では補いきれない必須アミノ酸を含み、特に鉄分の吸収率が高い。乳製品のカルシウムとビタミンDは骨の健康だけでなく、神経伝達にも重要な役割を果たす。
食の多様性とバランス
3か月の療養期間を終えた女性は、体重は増加したものの、精神的にも肉体的にもかつてない健康を取り戻していた。この経験から学んだのは、特定の食品を極端に摂取したり排除したりすることの危険性だった。
現在、彼女は普通の食事を楽しみながら健康的な生活を送っている。人参ジュースも亜麻仁油もオメガ3サプリメントも一切摂取していないが、以前のような不調は全く現れていない。バランスの取れた食事、適度な糖質、良質なたんぱく質、そして何より食事を楽しむことの大切さを身をもって体験した。