では、真っ二つに切ってしまった場合はどうなるのでしょうか?

驚くべきことに、切断時に漏れ出すはずの液体金属は、ほとんど失われませんでした。

研究者の解説によると、空気に触れたガリンスタンの表面にはすぐに酸化膜が形成され、それが仮のフタのように働いて液漏れを防ぐというのです。

しかも再び破断面を合わせると、この酸化膜が壊れて再接続され、電流がまた流れるようになるというのです。

まるで人間の体がケガをしても血液が固まって止血されるように、このセンサーも“自己止血”してしまうというわけです。

では、このように開発された新しいセンサーの耐久性はどうでしょうか。

800回の伸縮テストにも耐える「自己修復センサー」

新センサーの性能は、以下のような実験で確かめられました。

まず最大800回の伸縮テストが行われましたが、ドリフト(出力の変化)は5%以下でした。

また半分に切断し修復した後のセンサーを同じ回数伸縮させましたが、ドリフトは10%未満でした。

この結果から、センサーは繰り返しの損傷や修復を受けても実用に耐えると分かります。

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800回の伸縮テストにも耐える。材料の95%以上がリサイクル可能 / Credit:Rathul Nengminza Sangma(VUB)et al., IEEE Sensors Journal(2025)

さらに驚くべきは、材料の95%以上がリサイクル可能だという点です。

使用後のセンサーは、ポリマーの可逆性を活かして加熱・分解し、新たな形に再成形して利用することが可能です。

この技術は、医療分野やスポーツ科学、さらには柔らかいロボット(ソフトロボティクス)の皮膚のような部位への応用が期待されています。

研究チームはすでにスピンオフ企業「Valence Technologies」を設立し、製品化に向けた準備を進めているとのこと。

従来のテクノロジーは、壊れないことを前提に作られてきました。