「量子もつれ」が解き明かす未来からの記憶
統計データは、予知という現象の存在を強く示唆している。では、そのメカニズムは何なのか。ラディン博士は、その鍵が量子力学の世界にあると考えている。特に注目しているのが、「量子もつれ(エンタングルメント)」という現象だ。
量子もつれとは、ペアになった2つの粒子が、どれだけ遠く離れていても、まるで繋がっているかのように同じ振る舞いをする不思議な現象で、アインシュタインはこれを「不気味な遠隔作用」と呼んだ。
ラディン博士は、この理論を意識に応用する。「予知とは、あなたの現在の脳が、未来のあなた自身の脳と“量子もつれ”の関係にある状態なのではないか」と彼は説明する。つまり、未来で起こる出来事を経験した「未来の自分」から、時空を超えて情報が送られてくる。それが、現在を生きる私たちにとって「未来からの記憶」、すなわち虫の知らせやデジャヴとして感じられるというのだ。
時間が直線的ではないのなら、私たちの意識が目に見えない扉を通って未来へアクセスすることも、決してあり得ない話ではない。予知能力、そのメカニズムをめぐる科学者たちの挑戦は、まだ始まったばかりである。
参考:Popular Mechanics、CIA、ほか
文=深森慎太郎
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