街としてのコンセプトが明確な丸の内・大手町との違い
すでに渋谷や丸の内などに超高層ビルが数多く立ち並ぶなか、この先、数年の間に日本橋に相次いで超高層ビルが開業し、テナントが埋まるのかという問題もある。
「もともと八重洲は大手企業や情報通信系の新興産業などが集積する街ではなく、近くに日銀があるため地銀が支店を出したり、東京駅の前という立地から地方の企業が支社・拠点を置くというニーズが非常に強かった街です。大手企業や大手の国際法律事務所などは、やはり丸の内、大手町のビルに入るという傾向があり、丸の内・大手町は街としてのコンセプトが明確になってます。
それに対して八重洲は、たとえば東京ミッドタウン八重洲の入居テナントを見ても、近くに本社があった老舗大企業が移ってきただけという印象があり、兜町や新川に多かった証券会社のオフィスも減ってきているなかで、日本橋に先端的な産業が多く集積するのか、そして、そうしたなかでオフィスの供給量が極端に伸びるということには、やや心配があります」
28年に開業予定のトーチタワーも、安泰とはいえないという。
「トーチタワーのアドレスは実は中央区ではなくて千代田区なので、開発事業者の三菱地所は千代田区大手町というアドレスが欲しい大企業を積極的に集めていく考えでしょう。おそらくその他の日本橋のビルに比べると賃料水準を含めて良い条件でテナントを集めることができると思いますが、供給量がとてつもなく大きいので、あの貸付面積を綺麗に埋めるというのは、三菱地所であっても苦労するのではないかと業界内ではいわれています。日本橋に今後開業する新築のビルとの間で早くもテナントの争奪戦が始まっているともいわれていますが、そうなると本来の目標であった賃料水準を守れるのかという問題も出てくるかもしれません」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)