電動車いすはどんな種類がある?

 では具体的にどんな電動車いすがあるのか。まず電動車いすはユーザー自身が操作できる「自操式」と、自らの操作が難しく介助者が後ろから操作する「介助式」の2つに分かれる。さらに自操式はジョイスティックを自ら操作する「標準型」と、一般的に使用されている手押し車椅子にバッテリーとモーターを取り付けた「簡易型」に分類される。

 現在、国内の電動車いすでシェアトップなのは日進医療器。1964年に設立され、1999年には国内車椅子メーカーで初となる国際品質規格(ISO9001)に登録された老舗のメーカーとしても知られている。こちらの看板商品は6輪電動車いす「NEO-PR」。2分割にして折り畳みができるので、車への積み降ろしがスムーズな点が好評だ。ほか介助用の電動車いすでは、電動モーターで坂道や長距離も楽に移動できる「軽e(かるいー)」も有名だ。

 さらに新進気鋭の電動車いすメーカーとして注目を集めるのが、2012年に設立された「WHILL(ウィル)」。従来の電動車いすの機能性を維持しながらも、誰もが乗りたくなるデザイン性に優れていることが特徴で、全国の取扱店では気軽に試乗することも可能。多くのメディアでもたびたび取り上げられている。介護保険が適用となる「WHILL Model R」は狭い道のりでもスイスイ移動でき、その場で旋回できる小回りが特徴だ。

 ペルモビールは福祉大国・スウェーデンで1963年に創業された電動車いすメーカーで、約70カ国以上に事業を展開している。同社の人気モデル「F3 コルプス」は前輪駆動方式で室内での取り回しを助け、75mmの段差も乗り越えることが可能。立ち上がった姿勢に近い状態になり、足底から各関節などへ適切な荷重を加えることで身体への良い影響も報告されている。

 また、1989年より「ヤマハ発動機」も電動車いすの開発に着手。1995年にテスト販売を開始、翌1996年には本格的に販売をスタートさせている。そして2024年には同社で約10年ぶりとなる車いす電動化ユニット「JWG-1」を発表。ただし、こちらは完成車ではなく、後付けで手動車いすに装着することで電動車いす化することができるシステムユニットとなる。主に車いすメーカーに供給して手動車いす製品に装着することで電動化をおこない、新車として販売することを想定。電動車いすの新たな可能性を広げる形として注目を集めている。

 どれを選べばいいのかはユーザーの身体の状態にもよるので、ケアマネジャーや福祉用具の相談員、町や市など各自治体に相談するといいだろう。

 日本ではまだ高齢者の電動車いす移動は少数というイメージはあるかもしれないが、電動車いす普及協会によると2024年の出荷台数は1万9632台。これから高齢化が加速すれば、さらに増えるのは間違いないだろう。ちなみに中国では近年、気軽な移動手段として電動車いすを活用する若者も増えているというから驚きだ。日本でも今後さらに電動車いすが普及するのかが注目される。

(文=高山恵/ライター、有限会社リーゼント)