その結果、エヴァは参加をあきらめ、「どうせ何を言っても無駄」と口を閉ざしていきます。
これは、子どもの自己表現と親子の信頼関係の両方を損なう典型的なケースです。
バーンスタイン博士は、「ティーンエイジャーは、少しずつ社会的リスクに直面しながら、自分なりの判断力と責任感を育てていく必要がある」と説きます。
親が何もかも決めてしまうと、子どもは自立のために“反抗”するか、または“秘密主義になって内にこもる”ようになってしまうのです。
大切なのは、親が子供と懸念点について率直に話し合い、合意できる点を見つけることです。
ケース④:マーカス(25歳)──「親離れ・子離れ」ができない親子
社会人1年目のマーカスに、母親は毎日連絡してきます。
「ちゃんと食べてる?」「会社うまくいってる?」「上司とうまくやれてる?」
一見すると微笑ましいやり取りですが、マーカスにとっては「監視されている」「信用されていない」という感覚が強く、だんだん距離を取り始めます。
ここで問題なのは、親が子を「独立した一人の人間」として見ていないことです。
“見守る”のではなく“管理する”姿勢が続くと、成人後も子どもが自己決定する機会を失いやすくなります。
博士は、「親はモニタリング(監視)ではなく、メンタリング(助言)の立場に立つべき」と提言しています。
「何か困ったことがあったら話してね」「あなたなら大丈夫」などの信頼に基づく声かけこそが、健全な親子関係の鍵となります。

ここまでで、愛情深い親がどのように子供をコントロールし、悪影響を及ぼしてしまうか考えました。
親が子どもに干渉してしまう背景には、強い「不安」があります。
そしてその不安は、親に「コントロールすること」と「世話」が同じことだと勘違いさせます。
しかし、バーンスタイン博士が繰り返し強調するのは、次の点です。