鉄不足は異食症を悪化させる要因として知られており、彼女の粘土摂取増加もその影響を受けていた可能性があります。

こうして「少しなら害がない」と考えられていた行為が、いつしか「止められない渇望」となり、心身をむしばむ危険な依存症の様相を帯びていったのです。

粘土が引き起こした体の異変

女性が摂取していたのは、ガーナ産のベントナイト粘土でした。

この粘土にはアルミニウムやシリカといった成分が豊富に含まれています。

一見すると無害に思えるかもしれませんが、これらの成分は体内で重要なミネラルに結合し、電解質のバランスを崩してしまいます。

実際に彼女の検査結果では、カリウムやカルシウムの値が異常に低くなっていました。

カリウム不足は筋肉のけいれんや不整脈を引き起こす可能性があり、カルシウム不足も骨や神経に悪影響を及ぼします。

また、アルミニウムの血中濃度も通常の2倍以上に達しており、体内に有害物質が蓄積していたことがわかりました。

さらに便秘や消化管出血も併発していました。

検査用のCT画像では、大腸全体に高密度の物質が映し出され、粘土の影響で出血源を見つけるのも困難だったといいます。

内視鏡検査の結果、出血は便秘による粘膜への刺激が原因とされました。

医師らは、彼女の症状が粘土の摂取に起因する「電解質異常」と判断。

摂取をやめるよう指導し、鉄剤の投与などを行いました。

興味深いのは、この症例が「依存症」に非常によく似た特徴を示していた点です。

本人は「強い渇望」「耐性」「身体的悪影響にもかかわらず続けてしまう」といった、まさに薬物依存症で見られるような行動を示していました。

女性は精神科的なカウンセリングも勧められ、粘土の摂取を中止したことで症状が改善し、血液中の電解質も安定しました。

現在は外来で経過観察を続けています。

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参考文献

A woman’s craving for clay got so intense it mimicked signs of addiction
https://www.psypost.org/a-womans-craving-for-clay-got-so-intense-it-mimicked-signs-of-addiction/