この配置で量子テレポーテーションを実行すれば、ワームホール内部を情報が通過する様子をシミュレートすることが可能になります。
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは実際に、9ビットの量子から構成される量子プロセッサー内部に、ワームホールの特徴を発揮する疑似的なワームホール回路を埋め込み、何が起こるかを観察することにしました。
結果、量子もつれ状態にある2つのうち一方の量子の情報が、疑似的なワームホールを介して移動し、もう一方に伝達されていることが判明します。
この結果は、量子情報がワームホールを通過可能であることを示しています。
また実験結果は、通過可能なワームホールを表現するために用いられる重力理論が、量子テレポーテーションとして知られるプロセスを別の角度から表現したに過ぎないことを実証するものとなりました。
しかしより興味深いのは、情報通過にともなう疑似的なワームホールの挙動でした。
疑似的ワームホールから本物のワームホールで予測される特性が観測された

これまでの理論研究により、量子情報がワームホールを通過する場合にはワームホールが「負の反発エネルギー」によって開かれていなければならないことが示されています。
そこで研究では理論を検証するため、疑似的なワームホールに対して負の反発エネルギーと正の反発エネルギーが供給を行い、情報の行方が調べられました。
結果、負の反発エネルギーを供給した場合のみ、量子情報が疑似的ワームホール内部を通過し、正の反発エネルギーを供給した場合には、情報は「特異点」に落下して通過できないことが判明します。
また他にも本物のワームホールで起こると理論的に予想されている、重力によって情報が歪んでしまう現象(シャピロ遅延)、届けられる情報の時間的な順序、疑似的ワームホールでも予想と同じパターンで観測されました。