体に何か異常があっても、全く気づかないことがある。例えば、自覚症状のないままインフルエンザウイルスを撒き散らしていたり…。あるいは、胸の中にナイフが突き刺さったまま、何年も平然と暮らしていたり。
これは、タンザニアのある男性に実際に起きた、信じがたい医療ミステリーである。彼は「乳首が痛む」という些細な訴えで病院を訪れたが、その原因は誰もが予想だにしない、恐ろしいものだった。
すべての始まりは、ただの「乳首の痛み」
この物語の主人公は、タンザニアに住む44歳の男性。彼の奇妙な体験は、ある朝、右の乳首に感じた妙な痛みから始まった。
それから10日間で、症状は急速に悪化。乳首の下に穴が開き、悪臭を放つ膿が漏れ出し始めたのだ。これはただ事ではないと悟った彼は、ついに病院の門を叩いた。
医師たちが診察しても、彼のバイタルサイン（生命兆候）は完全に正常。痛みや発熱、呼吸困難といった他の症状も一切ないと彼は言う。しかし、医師は奇妙な点に気づいた。彼が呼吸する際、右胸の膨らみが左に比べて明らかに小さいのだ。感染している乳首も右側…。疑念を抱いた医師は、胸部のX線検査を行うことを決めた。
レントゲンに写った衝撃の“忘れ物”
現像されたレントゲン写真を見た医師たちの反応は、想像に難くない。そこには、男性の肋骨と臓器の間に突き刺さった、十数センチはあろうかという巨大なナイフの刃が、はっきりと写っていたのだ。これなら感染もするだろう。
当然、医師たちは仰天し、なぜ体内にナイフが入っているのか心当たりはないかと男性に尋ねた。彼も最初は同じように混乱していたが、やがて記憶の扉が開かれた。
「そういえば…」
男性は、8年前にナイフによる襲撃事件の被害に遭ったことを思い出した。顔や背中、そして胸に複数の刺し傷を負い、緊急治療を受けて縫合してもらったという。傷はきれいに治り、その後は何の不調も感じなかったため、誰もそれ以上の検査が必要だとは考えなかったのだ。
