BtoB事業推進の理由
ミキハウスは海外の病院や高級ホテルにコラボルームを設置するなど、BtoB事業も推進しているが、その目的は何か。
「前提として、ミキハウスというブランドは日本でこそ一定の認知度がありますが、世界ではまだまだ知られていません。上海万博を皮切りに中国においては、お子さまにとにかく良いものを求めるという、我々がターゲットとしている方々の約半分くらいは知ってるけれども、中国の全人口のうちで『ブランド名を耳にしたことがある』という人は10%に届くかどうかというイメージです。東南アジアやそれ以外の地域でも、残念ながら認知度的にはほぼ知られていないといっていい状況です。
そうしたなかで、弊社としては、まずは『こういうブランドがあるんだよ』ということを少しでも多くの方に知っていただく必要があり、その方法としてモールや百貨店に店舗を構えてお客様に来ていただくというかたちがありますが、今ではSNSなどで先にブランド名を知ることも多いです。店舗はブランディングのベースであり、最終的にそこできちんとお客様に寄り添って接客をさせていただいて、商品をご購入いただく満足度を提供できる環境を整えていきたいという思いはありますが、そこに行き着くまでが非常に難しいです。
そこで、より多くのお客様に弊社の安心・安全な商品と高付加価値なサービスをお届けできるように、産院や産前産後ケア施設、高級リゾートホテル等との法人の取り組みを強化しています。日本国内ではオリジナルのベビー肌着や授乳クッションなど新製品の開発や、退院ギフトの採用、産後セミナーの提供等、日本中の100以上の施設と提携しております。ホテルでもコラボルームやホテル内アメニティの採用、ホテル内ショップの展開等、お子さまとの滞在がより楽しく、快適に過ごして頂けるような取り組みが進んでいます。今はこのような取り組みが海外にも広がってきました。
中国、タイ、ベトナムといった国々には全世界中から渡航者が集まっており、このような取り組みを通して、ホテルや産院でミキハウスというブランドを知っていただき、品質の良さを実感いただくという狙いもあります。例えばタイのバンコクで技術力の高い医療を提供するランカムヘンという病院では、退院する赤ちゃんにミキハウスの商品をプレゼントしたり、子どもが元気な気持ちで治療を受けられように小児科と産婦人科の空間をプロデュースしたりといったことも行っております」
今後の海外事業の展開について、むやみに規模を追うことはしないと同社は言い切る。
「高品質の商品とサービスをワンセットでお届けすることを重視しながら、各国のニーズに合わせて代理商様と連携しながら、きちんとフォーカスを絞ってサービスを提供していきたいと考えています。海外のある企業から『当社と組めば一気に500店舗オープンできますよ』といったお話をいただくこともありますが、弊社の商品は素材を厳選し、生地から丁寧につくっているので、大量生産ができません。一時的なビジネス拡大と売り上げを追求するのではなく、子どものための安心・安全な高品質で信頼されるブランドとして、それぞれの地域で着実に顧客様を増やしていきたいと考えております。」
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)