●この記事のポイント ・ミキハウスの海外事業が拡大、店舗数ベースでは海外が国内を上回っている ・海外で代理商になるオーナーの多くが、ミキハウス商品のヘビーユーザーやお客様 ・海外の病院や高級リゾートホテルにコラボルームを設置するなど、BtoB事業も推進
年間売上高は183億円(2025年2月期)に上る高級子ども服ブランド・ミキハウスの海外事業が拡大している。すでに店舗数ベースでは海外が国内を上回っており、着実に店舗数を拡大させているが、意外にも「規模の拡大よりも質を重視している」(同社)という。同社の強さの秘密、そして海外事業成長の背景について追ってみたい。
●目次
「ものづくり」に妥協を許さない姿勢
ミキハウスの海外事業は1979年、アメリカ市場向けの輸出がスタートとなった。1987年にフランスのパリに第1号となる海外直営店、パリ ヴィクトワール店をオープンし、海外展開を本格的に開始。2010年には上海万博日本産業館への出店が契機となりアジア、特に中国でブランド認知度が向上し店舗数が拡大し、海外展開が急速に進展した。2025年7月現在の海外店舗数は107店であり、日本国内の直営店90店舗よりも多い。海外の旗艦店は、ニューヨークのザ・プラザホテル店、ロンドンのハロッズ店、パリのサントノーレ路面店、上海のIFC店、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズ店、台北のべラヴィータ店で、海外におけるブランド発信の拠点となっている。
ミキハウスの海外事業が順調に拡大している要因について、同社グローバル事業部は次のように説明する。
「弊社の一番のアイデンティティ、軸となるのは、子どもにとって着やすい、本当に安心安全であるという、子どもを第一に考えて、子供服ならでは高品質にこだわった『ものづくり』に妥協を許さない姿勢という点です。実際に使っていただいて、商品の肌触りや丈夫さなどへの驚きと気づきを世界中のお客様に感じ取っていただいているところなのかなというのは、すごく感じます。また、海外事業については現地の代理商様に商品を卸し、販売をさせていただいているため、弊社がもっとも大事にしている理念や考え方を、販売現場でお客様とじかに接する代理商様や販売スタッフの方々にどれだけ共有していただき、同じ温度感でお客様にそれを語って商品をご提供できるのかを重要視しています。
そのためには、教育やレクチャーの前に、まず代理商様がなぜ弊社の商品を扱って商売をしたいと思われたのかがもっとも重要です。実は海外で代理商になっていただいている方の多くが、元々は弊社商品のヘビーユーザー、お客様なんです。みなさん、日本に来た際に弊社の商品を直営店で接客を受けて購入し、サービスも含めて共感・感動されたという方が非常に多いです。このような、私たちの子どもへの想いと、もの・サービスの価値に共感し、信頼関係のあるパートナーと一緒に現地でのブランド展開を進めています。
近年では、各国の言葉できちんとミキハウスが商品に込めた思いを、世界中のお客様により伝えられるよう、弊社の教育研修と手を組んで、現地のスタッフの方々への教育も本格的にスタートしました。この取り組みを通して、我々の思いがこれまで以上に現地のお客様に届き始めたと実感しております」
つまりミキハウスの海外展開については、ターゲットとする地域を定めて同社主導で出店を進めるだけではなく、各国・地域の代理商からの要請を受けて進出をするというケースも少なくないのだ。
「もちろん中長期的な海外進出計画を策定してマーケティングリサーチを行っておりますが、結果的にブランドの認知度が上がって、売り上げが大きくなる地域は、弊社の商品を扱いたいと手を挙げてくださった代理商様が手掛けられるところが多いのは事実です」