つまり、罵倒が“嬉しい”と感じられるかどうかは、相手との関係性と安心感によって大きく変わるのです。

罵倒がご褒美に変わる瞬間

罵倒されることで喜びを感じる現象は、単なる変態というではありません。

そこには、心理学でいう良性マゾヒズムの安全なスリルに加え、自己評価や罪悪感、権力関係、注目欲求といった複数の心理的要因が絡み合っています。

信頼できる相手からの罵倒は「本気で嫌われていない」という安全地帯を前提に、不快感をスパイスへと変えることができます。その上で、自分の本質を見抜かれたような安心感や、罪の償いをしたような解放感、責任から解放される安堵、そして相手の関心を一身に浴びる高揚感が加わることで、その体験は“ご褒美”として成立します。

つまり、この心理は安全な文脈 × 複数の個人的動機がそろったときにのみ生まれる繊細な感情です。裏を返せば、関係性や状況が変われば、それは容易にただのストレスや脅威に変わってしまいます。

安心感と刺激の間を巧みに行き来する――そこに、この独特な喜びの本質があるのです。

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参考文献

Emotional Masochism – A Solace From Suffering
https://www.icliniq.com/articles/emotional-and-mental-health/emotional-masochism-a-solace-from-suffering?utm_source=chatgpt.com

元論文

A circuit mechanism for differentiating positive and negative associations
https://doi.org/10.1038/nature14366
Primary Masochism Is not a Form of Narcissism
https://doi.org/10.3928/00485713-20091022-06