ロシア側が米国との交渉に応じている限り、米国は対ロ制裁を一時停止し、新たな制裁は行わないから、ロシアにもメリットだ。実際、米政府は14日、対ロシア制裁の一部を停止すると発表している。米財務省によると、この停止は8月20日まで有効という。
制裁に関連して注目すべきニュースが流れてきた。ウクライナ対外情報局(SZRU)は、ロシア産原油価格が下落しているという。SZRUによると、ウラル原油は1バレルあたりブレント原油より1.50ドル安い。同局は、インドでの販売減少を理由に挙げている。国営石油会社であるインド石油公社(IOC)とバーラト石油公社は、トランプ大統領の脅迫を受けて、中東や米国などから2,200万バレルの原油を突如購入したというのだ。SZRUは、中国がインドでの販売減少を完全に補填することはできないと見積もっている。すなわち、トランプ氏の制裁警告は効果を生み出しているわけだ。原油輸出による外貨収入はプーチン氏の戦争費用だから、その収入減はプーチン氏にとって痛手だ。
なお、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ロシア軍の攻撃を受けたウクライナで7月に死傷した民間人の数が過去最高を記録したという。死者は286人、負傷者は1,388人だ。前年同月と比較すると、死傷者数は22.5%増加した。死傷者の約40%は、キエフ、ドニプロ、ハルキフなどの主要都市だ。
ちなみに、欧州の一部やロシアのメディアでは、米ロ首脳会談を「第2のヤルタ会談」と報じている。ヤルタ会談とは、第2次世界大戦末期の1945年2月4日から11日まで、ウクライナのクリミア半島にあるヤルタで、米国のルーズベルト大統領、英国のチャーチル首相、ソ連のスターリン書記長兼首相の3首脳が会談したもので、同会議ではドイツの戦後処理問題、国際連合の設立、中欧、バルカン諸国の戦後処理などが議論された。同会議を通じて、米国とソ連という冷戦時代の2大国体制が確立されていった。これを「ヤルタ体制」と呼ぶ。もちろん、15日のアラスカの米ロ首脳会談は「第2のヤルタ会議」ではないし、そうあってはならない。