金は当時、王侯や宗教的指導者などごく限られた高位の人々のみが使用を許された素材であり、装飾や儀式の道具として特別な意味を持っていました。

発見地は古代ローマの大動脈沿い

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9世紀の金のボールヘッドピン/ Credit: Portable Antiquities Scheme/Newcastle University

この2つの金製品が出土したのは、かつて「ディア・ストリート」と呼ばれた古代ローマの主要街道沿いです。

ディア・ストリートは2世紀当時、イギリスのヨークとスコットランドを結び、ローマ帝国最北部への物資輸送の大動脈として機能していました。

ローマ帝国滅亡後も道は使われ続け、現代では国道の一部となっています。

ニューカッスル大学ローマ考古学のジェームズ・ジェラード教授は、この道の歴史的意義について次のように語ります。

「ディア・ストリートはローマ時代以降も高い地位の人々が行き交う幹線道路でした。今回の発見は、その事実を物語っています」

また、2つの類似した金製品が同じ場所で見つかったことから、教授は「意図的に一対として埋められた可能性がある」と指摘しています。

もし儀式や宗教行事で使われた品であれば、何らかの理由で地中に奉納されたのかもしれません。

発見品は今後、英国の「ポータブル・アンティクイティーズ・スキーム(PAS)」を通じて詳細な分析が行われ、最終的にはグレート・ノース・ミュージアム:ハンコックで展示される予定です。

同博物館の発見品連絡官アンドリュー・アゲート氏は、「金属探知機愛好家と考古学者が協力して成果を上げた好例」と評価しています。

この共同作業により、学生たちは発掘技術を学びつつ、地域の歴史解明にも貢献できました。

9世紀に作られた金製品が、現代の学生の手に渡る─。

その瞬間、時代の隔たりは一気に縮まり、歴史が生きていることを私たちに実感させてくれます。

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