筆者自身もかつて派遣勤務時代や東京で会社員をやっていた頃、帰省や旅行は必ず閑散期にずらし、逆にお正月やお盆は割増賃金で働くことを選んでいた。お盆やお正月をわずか1か月ズラすだけで、費用は数割減、混雑は激減する。今年もお盆の時期の「前」に実家の人間と再会していた。
近年はこうした行動を取る人が珍しくなくなった。
そもそも実家に帰らない
一方、時期をズラすのではなく、そもそも実家に帰らない人も増加している。その背景には娯楽や交流手段の多様化がある。
総務省の調査では有料動画配信サービスの利用者は年々増加し、2024年には3,800万人を超えた。オンラインゲームやSNS、趣味活動のコミュニティなど、物理的な移動を伴わずに満足感を得られる環境が整っている。
かつては親や旧友と直接会うための帰省が主目的だったが、今はオンラインで日常的に繋がれるため、その必要性は相対的に低下している。
もちろん、帰省には家族との再会や地域とのつながりという重要な価値がある。総務省の統計によれば、高齢者単独世帯は増加を続けており、対面での交流はますます重要になっている。
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重要なのは「帰るか否か」ではなく、「いつ、どのように帰るか」である。短期間でも質の高い再会を実現すること、オンラインと組み合わせて接触頻度を高めることが、現代の合理的な親孝行と言えるだろう。
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