さらにシマウマは、群れで生活する野生の馬とは異なり、家族構成や上下関係を持ちません。

これが他者との協調性を、ひいては人との信頼関係を築けない大きな要因です。

このように、人々はシマウマが友好的でないことにすぐ気づきましたが、それでも家畜化に成功した例はいくつかあります。

どうしてもシマウマに乗りたかった人たち

19世紀に、ニュージーランドの首相を務めたジョージ・グレイ(1812〜1898)が、南アフリカからシマウマを輸入しました。

グレイは知事に就任した際、シマウマに馬車を引かせたがったといいますが、あまり上手くはいかなかったようです。

それから、イギリスの動物学者であったウォルター・ロスチャイルド(1868〜1937)も、長い時間をかけてシマウマを飼い慣らし、シマウマの引く馬車でバッキンガム宮殿に行ったと伝えられています。

また、20世紀初頭には、ナイロビで最初の医師となったロゼンド・リベイロ(1871〜1951)が、シマウマに乗って各家を往診していました。

シマウマに乗るロゼンド・リベイロ
シマウマに乗るロゼンド・リベイロ / Credit: en.wikipedia

しかし、これらはシマウマを飼い慣らした2、3の例にすぎません。その陰では、多くの試みが失敗に終わっています。

2013年には、米・バージニア州在住の女性、シーア・インマンさんが、シマウマを訓練して、乗馬を試みました。

何ヶ月にもわたる忍耐と報酬を与える訓練を続けた結果、なんとかシマウマに乗れたものの、インマンさんはこう述べています。

「30年も人を乗せ続けてきたベテラン馬のように振る舞う日もあれば、次の日には、人を見たことないような態度を取ることが良くある」

インマンさんがシマウマに乗る様子。

このように、シマウマは馬のような外見にもかかわらず、人間に簡単には服従しません。

結局のところ、シマウマには、弱肉強食のアフリカの地で育ったDNAが深く刻み込まれているのです。