老後を楽しく送ることは可能でしょうか。

誰しも自分や親のことを考えると、平和で健康な日々を期待するのは自然なことです。

しかし、現実にはうつになる高齢者が少なくありません。

ではうつの原因は何でしょうか?

千葉大学予防医学研究センターの研究チームは、国内25市町に住む高齢者を対象に、公共交通機関の利用可能性とうつの関係を解明する日本初の長期調査を実施しました。

その結果、車を利用していない高齢者で駅やバス停が近くにないと感じている人は、あると感じている人に比べて、3年後に1.6倍もうつを発症しやすいことが明らかになりました。

この研究は、2024年12月9日付の『Preventive Medicine』誌に掲載されました。

目次

  • 「老後うつ」を避けるには?
  • 近くに公共交通機関がない高齢者は3年後のうつ率が1.6倍に

「老後うつ」を避けるには?

この研究が行われた背景には、日本の地方部で進行している公共交通の減少があります。

人口減少と高齢化によって、駅やバスの路線は廃止され、利用者も減少し、サービスの継続が難しくなるという悪循環が生じています。

その結果、自宅近くに公共交通機関がない高齢者が増えました。

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老後の環境と「うつ」との関係は? / Credit:Canva

このことは、歩行時間や社会参加の減少に繋がり、心の健康に悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。

しかし、これまでこの問題を長期的に追跡した研究はほとんどなく、複数の自治体を対象とした大規模な調査は日本では実施されていませんでした。

千葉大学の研究チームは、中規模以上の都市を含む25の自治体において、2016年から3年間にわたり、日常生活において自立している高齢者4,947人を対象に調査を行いました。

対象者は調査開始時にうつ症状がなく、GDS-15(老年期うつ評価尺度)で5点未満であることが条件とされました。