2021年に米国国立経済研究局(Taylor and Schlenker 2021)が発表した報告書では、米国全土の屋外CO2濃度を衛星観測データで測定し、郡別の農業生産データやその他の経済変数と照合しました。天候、汚染、技術の影響を調整した後、著者はCO2濃度の増加が1940年以降、米国の作物生産を50%ないし80%も増加させたとの結論に至りました。これは野外でのCO2濃度増加実験で以前推定されていた値よりもはるかに大きな増加でした。彼らは、CO2濃度が1ppm増加するごとに、トウモロコシの収量が0.5%、大豆が0.6%、小麦が0.8%増加することを発見しました。
図9.1を見るとCO2濃度は1940年以来、33%ほど増えている。これは約100ppmに相当するから、これによる収量増加はトウモロコシが50%、大豆が60%、小麦が80%となる。この間の収量の増大は猛烈で、図をみるとトウモロコシが500%、大豆が200%、小麦が200%もあり、これは品種改良や肥料・農薬などの技術進歩に多くを依っていたが、CO2濃度の増大も、少なからぬ寄与をしたということだ。
将来についてのシミュレーションでは、気温上昇や雨量の変化などによって作物の収量が減少するという論文があるが、CO2の施肥効果をきちんと考慮するならば、あらゆる作物の収量は、5℃といったかなり高い平均気温上昇のシナリオの下でも、むしろ増大するという結果をCWGは示している。
また、CO2濃度が上昇すると、作物の栄養素(蛋白質、ビタミンなど)が低下するという論文があり、このこと自体がまだ真偽のほどははっきりしないが、仮に栄養素が不足するとしても、品種改良や他の食品で補うことで十分に適応できる、とCWGは論じている。