終焉の兆候―私たちは気づくことができるのか?
では、もしビッグクランチが始まったら、私たちはそれに気づくのだろうか。専門家によれば、その変化はあまりにも壮大なスケールで、億年単位の時間をかけてゆっくりと進むため、数百年から数千年しか存在しない人類のような文明が、日常生活で異変に気づくことはないという。
しかし、もしその時代に天文学者がいれば、決定的な兆候を捉えることができるだろう。遠くの銀河が、それまで我々から遠ざかっていた(赤方偏移)のが、一転してこちらへ向かって突進してくる(青方偏移)のが観測されるはずだ。それが宇宙の終わりへのカウントダウンが始まった合図となる。

灼熱地獄へのカウントダウン
宇宙の収縮が始まると、最初の明確な変化は「宇宙全体の温度上昇」として現れる。膨張によって冷えてきた宇宙が、今度は圧縮されることで急激に熱を帯びていくのだ。
今から約130億年後、宇宙のエネルギー密度は現在の1000倍に達する。そこからわずか5億年後にはさらに1000倍になり、宇宙空間そのものが「室温」程度になるという。もはや太陽に温められるのではなく、宇宙そのものが私たちを熱するようになるのだ。 その数百万年後には、宇宙全体が太陽の表面と同じくらいの灼熱地獄と化す。ハーバード大学のアヴィ・ローブ教授は「言うまでもなく、人類はこの宇宙規模の地獄の業火に焼かれて消滅するでしょう」と語る。
最終的に、宇宙は物理学で想定される最高温度「プランク温度」に達し、原子核さえもバラバラに引き裂かれる。惑星や恒星は押しつぶされ、あらゆる物質が超高密度のスープとなる。この地獄を生き延びられるのはブラックホールだけだ。彼らは周囲の超高密度の物質を貪り食い、さらに巨大化する。そして最後には、そのブラックホールさえも含むすべてのものが、ビッグバン以前のような無限の密度を持つ一点(特異点)へと押しつぶされ、宇宙は完全に終わりを迎える。