研究は2つの実験に分かれて行われ、合計87人の参加者が対象となりました。
参加者たちはfMRI装置の中で、「自分自身」あるいは「配偶者」の身に起こるさまざまな未来の出来事――たとえば「リゾートに宿泊する(ポジティブ)」や「多額の借金を背負う(ネガティブ)」など――を10秒間かけて想像するように求められました。
その後、楽観性のレベルを心理尺度で測定し、脳活動と性格特性との関係を分析しました。
チームが注目したのは、内側前頭前野(MPFC)という脳領域です。
この領域は、自己関連の思考や未来をシミュレーションする際に活性化するとされており、「将来をどう描くか」に関わる中心的な役割を担っています。
そしてデータ解析の結果、驚くべきことに、楽観的な人たちの脳は、未来を思い描くときに非常に似た神経活動パターンを示していたのです。
一方で、悲観的な人たちの脳活動は人それぞれで、共通点がほとんど見られませんでした。
さらに解析により、楽観的な人ほど「ポジティブな未来」と「ネガティブな未来」を明確に区別して処理していることがわかりました。
これは楽観的な人ほど良い未来と悪い未来を脳内で明確に区別して捉えていることを意味します。
このような“感情的整理”の精度の高さが、楽観的な人同士の脳活動を似たものにし、相互理解や共感を促している可能性があると考えられます。

今回の研究は、私たちが未来をどう思い描くかという心の営みが、脳内で他者と“共有”されている可能性を示しました。
楽観的な人々は、未来を明るく、そして似たような方法でイメージすることで、お互いの考えや感情を理解しやすくなっているのかもしれません。
今後の課題としては、この脳の共通性が実際のコミュニケーションや協力行動にどう影響するかを、行動実験を通じて明らかにしていくことが求められています。
また、「なぜ」楽観的な人の認知構造が似てくるのか――その起源が遺伝的要因なのか、幼少期の経験なのかを探ることも、心の多様性と普遍性を理解する手がかりになるでしょう。