これだけでも十分に驚きですが、この足跡のすぐ近くに2頭の大型ティラノサウルス類が、これらの草食恐竜の足跡の進行方向とは垂直の方向に並んで歩いていた痕跡が残っていたことです。

研究者たちは、この発見を「白亜紀の一瞬を切り取ったスナップショット」と表現しています。

これらの足跡は、何を意味するのでしょうか?

草食恐竜の「混成行軍」は捕食者への対抗策か?

異なる恐竜種が同じ方向へ、同じような間隔で歩いていた。

この事実は、単なる偶然ではなく、混成の群れ(multispecies herd)として移動していたことを示していると考えられます。

現代のアフリカでも、ヌーとシマウマが混在した群れをつくり、ライオンなどの捕食者に対して防衛を強化する行動が見られます。

大きさや性質の異なる動物が共に行動することで、危険の察知や逃走行動を効率的に行うことができるのです。

同様に、白亜紀後期の草食恐竜たちも、種を超えて集団を形成することで肉食恐竜から身を守っていた可能性があるのです。

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異種同士で集まって防御力を高めていた?/ Credit: University of Reading(2025)

ケラトプス類たちの足跡は水辺に向かって進んでいたことがわかっており、群れで水を求めて移動していたと考えられます。

その一方で、ティラノサウルスの足跡の方向は、草食の混成軍団に対してちょうど垂直方向にあり、それはまるで遠くから草食恐竜の群れをジッとうかがっているようでした。

もしかしたらティラノサウルスたちは、草食恐竜を捕食したいのに、守りが堅いので攻めるに攻められなかったのかもしれません。

これが正しい見方だとすると、草食恐竜の混成軍団の目論見は功を奏していたと考えられます。

ただその群れの中に、小さな肉食恐竜が混じっていたことも興味深いです。

彼ら自身もより大型の肉食恐竜から身を守るために、草食の混成軍団の中にお邪魔していたのかもしれません。