また、スルメも天日干し技術の発展により保存性を向上させ、江戸のおつまみとして広く愛されるようになりました​。

スルメは縁起物としても広く親しまれており、結納品や贈答品として、長寿や繁栄を願う縁起物「寿留女(するめ)」の名で親しまれるようになったのです。

一方、江戸時代の中期頃から、スルメの名前自体は「スルメの『スル』というところが「お金をする(全部使ってしまう)という語感を持つため縁起が悪い」と考える動きがあり、スルメを「アタリメ」と言い換えて使われることも増えてきました。

漁獲量拡大と全国消費の多様化

イカを取り巻く状況は、現代に入ると大きく変わっていきました。ひとつ目は世界漁獲シェアの拡大です。

日本のイカの世界漁獲シェアは1980年には134万トン中51万トンを占め、世界の半数超を漁獲するようになりました​。

2つ目は冷凍保存技術の確立です。1950年以降、石川県などで一尾凍結法が普及し、釣りたての鮮度を保持した「船凍イカ」が登場。イカは元々水分量が少ないということもあって冷凍による劣化は少なく、この技術の発展により家庭でも使いやすくなり、さらなる消費拡大に寄与しました​。

保存食としても知られる<イカ>の歴史 古くから日本人に愛されていたワケとは?イカ釣り漁船(提供:PhotoAC)

以上のように、イカは古代から現代に至るまで、時代ごとの技術革新と社会制度の変化を背景に、献上品・貿易品・庶民の保存食へと姿を変えつつ、日本人の食文化を支えてきたのです。

近年ではスルメイカの資源量が枯渇して急速に漁獲できなくなり、例えばいかめしなどは原材料の確保にも難儀しているそう。

海洋との付き合い方がどれだけの勢いで変化しているのかについても考えるひとつのきっかけになりそうです。

<華盛頼/サカナトライター>