何世紀にもわたり、人々は月の表面に現れる奇妙で、はかない光の点滅に気づいていた。かつては目の錯覚や観測ミスとして片付けられてきたその不気味な輝きは、やがて科学者たちの関心を引きつけ、今なお私たちを魅了する謎となっている。

 望遠鏡が発明された17世紀以降、この奇妙な光の報告は増え始めるが、その記録はさらに古く、中世にまで遡ることができる。

傷ついた蛇のように身もだえした月

 1178年、イギリスの修道士カンタベリーのジャーベイスは、驚くべき光景を記録に残している。

「その夜、月は輝かしい三日月で、その角は東を向いていた。すると突然、上の角が二つに割れたのだ。その裂け目の中ほどから、燃え盛る松明が飛び出し、かなりの距離にわたって火や熱い石炭、火花を噴き出した」

「その間、下の月の本体は、まるで苦悶するかのように身もだえし…目撃者たちの言葉を借りれば、傷ついた蛇のように脈打っていた。この現象は10回以上も繰り返された」

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 800年以上前のこの記録は、カラフルで非科学的な言葉で綴られてはいるが、現在「一時的な月面現象(Transient Lunar Phenomena、TLP)」と呼ばれる現象を捉えた、最も古い記述の一つだと考えられている。この呼び名を提唱したのは、イギリスの著名な天文学者、故パトリック・ムーア卿だ。彼は何十年も月を観測し続け、この現象が実在することを世に知らしめた人物である。

今も続く“月の謎の閃光”… それは隕石の衝突か、それとも未知の“何か”かの画像2
(画像=パトリック・ムーア卿 BySouth Downs Planetarium– Extracted from upload by User:Southdownsplanetarium,CC BY-SA 3.0,Link)