そこで、これまでの問題を克服するため、十腕形目(イカ類)と八腕形目(タコ類)を対象とした2種類の頭足類特異的検出系を開発。その分類学的特異性、分解能、カバー率を評価したほか、異なる水深で採集された環境DNAサンプルを用いて、開発された検出系の有用性の検証が行われました。
多種多様な頭足類の検出
この研究で開発された検出系が野外でも適用可能であるかを調査するために、太平洋の西七島海嶺沖合海底自然環境保全地域を含む調査地の表層及び深層の水を採水し、環境DNAの検出が試されました。
その結果、海水試料からイカ類54種とタコ類6種の計60種の頭足類のDNAを検出。表層のサンプルからは5科7属10種のイカ類を検出したほか、中深層(水深200~1000m)のサンプルからは15科27属34種のイカ類、漸深層(1000~2000m)のサンプルからは深海イカ類と6種のタコ類の配列が検出されました。
中深層や漸深層のサンプルから検出されたイカ類の代表例として、ダイオウイカやソデイカ、トビイカ、ユウレイイカ、ホタルイカモドキ属の1種などが挙げられており、水深200m以深では小型のイカ類からダイオウイカのような大型種まで多様な頭足類のDNAが検出可能であることが示されています。
深海頭足類の多様性の解明
今回、新たに開発された革新的な手法は従来の調査手法と比較して高感度かつ高効率であることが特徴とのこと。今後、深海性頭足類の多様性の解明に向け重要な役割を果たすことが期待されています。
一方、イカ類と比較して、タコ類は環境DNA検出率が低いといった課題も残っているようです。
これはタコ類は群れを形成せず単独でいることに加え、多くが底生性であることに起因する可能性が指摘されています。より多くの種のDNAを検出するために今度も研究、調査が望まれているでしょう。
<サカナト編集部>