J1昇格クラブに共通する大きな特徴のひとつが、戦術を継続的に浸透させ、主力選手を固定してチームの軸を確立していることだ。J2は過密日程に加え、夏場は酷暑や移籍市場の影響で戦力が変動しやすい。その中で、主力の多くがケガやコンディション不良に陥ることなく出場し続けることは、極めて重要な要素となる。

2022シーズンに優勝し昇格したアルビレックス新潟は、当時、MF伊藤涼太郎(現シント・トロイデンVV)、MF三戸舜介(現スパルタ・ロッテルダム)、MF藤原奏哉ら主力陣がチームの土台を築いた。伊藤はシーズン全42試合に出場し、藤原も41試合に出場。当時の松橋力蔵監督から寄せられた信頼は絶大だった。監督と選手のこのような信頼関係が、才能を最大限に引き出す環境を生み出していたと言える。

また主力選手の固定は、選手同士の連携や理解度を深めるうえでも大きな効果をもたらす。攻守の連動性が高まり、相手に対して優位に立ちやすくなるからだ。磐田(2021年)や町田(2023年)も、主力11人の出場時間が多く、試合を重ねるごとにチームの完成度を高めていった。これは戦術の浸透に不可欠な要素であり、J2の長丁場では特に有効な戦略と言える。逆に、補強過多で序列が不明瞭になったり、戦術が選手主導で迷走したりすると、チームバランスは崩れやすい。そうしたクラブは、昇格争いの終盤で失速する傾向がある。

清水エスパルスのホーム IAIスタジアム日本平 写真:Getty Images

鍵となるホームでの強さ

さらに、J1昇格クラブは例外なくホームで高い勝率を誇っている。2023シーズンに優勝・昇格を果たした町田ゼルビアは、ホームゲームで13勝4分4敗という圧倒的な成績を残した。

J2は移動距離や天候の厳しさから、アウェイ戦が難しく、ホームでいかに勝ち点3を積み上げるかが昇格争いの行方を左右する。スタジアムの雰囲気やサポーターの声援は、選手のモチベーションを高めるだけでなく、プレー精度の向上にも良い影響を与える。