研究では、最新の「NEOの軌道や分布を推定するシミュレーションモデル」を用い、500万個の仮想NEOの軌道を生成。

対象は直径140メートル以上の天体で、地球衝突時には地域的または地球規模の被害が想定されるサイズです。

この500万個のNEOを精密な軌道計算システムで150年間追跡し、地球半径内を通過した場合を「衝突」と判定。

得られた衝突確率と個人の人生で生じる不幸な出来事の確率を比較しました。

140m以上の小惑星が地球に衝突する確率は、「自分が雷に打たれる確率」より高い

シミュレーションの結果、直径140mを超えるNEOの衝突頻度は、約1万1000年に1回だと推定されました。

この結果は、過去に行われた推定とほぼ一致する結果です。

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140メートルを超えるNEOが地球に衝突する確率と、個人に起こりうる他の確率を比較した図 / Credit: C. R. Nugent(Olin College of Engineering)et al., arXiv(2025)

そして、この確率は、「生涯で落雷に遭う確率よりも高い」と言えます。

同様に、生涯でコヨーテに襲われる確率、生涯で象に襲われる確率などよりも高いと言えます。

一方で、交通事故やインフルエンザ感染に遭う確率の方がはるかに高く、これらは日常的に遭遇し得る危険として認識されています。

ちなみに、衝突時の被害規模は天体の大きさや衝突場所で大きく異なります。

たとえば、140〜200メートル級が海に落ちれば死者ゼロの可能性もありますが、都市部直撃なら数百万人規模の被害もあり得ます。

さらに巨大な小惑星であれば、気候変動や農業被害が世界規模に広がる可能性もあります。

本研究は、一般の人がリスクを感覚的に理解できる「比較の物差し」を与えた点で大きな意義があります。

著者らは「惑星防衛は保険のようなものであり、その保険料は悲劇を未然に防ぐために支払われるべき」と強調しています。