私は為替の決定因子は通貨発行量という単純なものではないと考えており、その背景には国力や5年後、10年後の国のチカラを見据えたものだと考えています。例えば日本の30年物のような長期国債の利回りは現在3%超でこの4-5年でゼロ近辺から着実に上昇してきました。これが何を意味するのか、切り口はいろいろありますが、基本的には日本の将来に不安があると見ているわけです。超長期国債の利回りとはリスク指針とも言えなくありません。
とすれば上述の円ドル120円は理想論であり、現実には円安バイアスが大きくかかるのだろうとみられます。
一方、アメリカはどうでしょうか?今回の関税措置、あるいはエヌビディアやAMDに中国で稼いだ分の15%をアメリカ政府に上納せよというやり口を見ているとトランプ氏はとにかくアメリカ財政収支を改善させるということに全力を注いでいます。まさに「金、かね、カネ!」であります。ではアメリカに生産拠点がもどり、メード イン アメリカが国内外の主たる流通品になるのか、というとそこまで想像力を掻き立てるには私にはまだ才能がなさすぎると思います。つまりそんなことが起きるとは思えないのです。
上述のインタビューでベッセント氏は「相互関税を『溶けていく角氷(アイスキューブ)』と表現し、将来的な税率引き下げや撤廃の可能性にも触れた。1つの具体的な条件としては 『米国に生産拠点が戻って輸入量が減り、国際不均衡が是正されること』と述べた」とあり、更に「トランプ大統領の任期中かはともかく、時間が経過すれば日米の国際収支はバランスを取り戻せる」と述べています。
私からすれば楽観的というか、理想論過ぎると思います。私の見立ては「溶けないアイスキューブ」だろうと思います。むしろもっと凍らせよというかもしれないと思っています。理由はアメリカの人件費と管理コストがあまりにも高く、モノを作るという現場仕事には向かないのであります。おまけに移民政策に制限をかけているのでここは二律背反するところです。もっともアメリカ人を雇用するのではなく、ロボット化した無人工場でも作るなら話はかなり変わってくると思いますが。