科学が解き明かす“赤い海”の正体
しかし、この終末論的な騒ぎに対し、科学者たちは冷静な見解を示している。イスラエルの環境省が発表したところによれば、この変色の原因は、超自然的な現象ではなく、特定の藻類の大発生、いわゆる「赤潮」の一種だという。
原因となったのは、「ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)」という緑色の微細な藻類。この藻類は強い日光を浴びると、カロテノイドという天然の色素を体内に蓄積し、水全体を赤く見せる性質があるのだ。
現地の研究所による水質検査でも、この藻類は人体に無害であることが確認されており、不気味な色にもかかわらず、湖で泳いでも健康上のリスクはないと公式に発表されている。
聖なる湖が問いかけるもの
原因が科学的に説明されたとはいえ、この出来事が持つ象徴的な意味が消えるわけではない。新約聖書において、ガリラヤ湖はイエス・キリストが数々の奇跡を起こした舞台だ。彼が水の上を歩き、5000人にパンと魚を与え、ペテロやアンデレを弟子として召し出したのも、この湖だった。
実は、このような現象は今回が初めてではない。2021年にも、聖書でソドムとゴモラの地とされる死海近くの水たまりが同様に血の色に染まり、大きな話題となった。
聖なる湖が見せた一見不吉な光景。それは神の裁きでも終末の預言でもなく、地球の自然な営みの一部だった。しかし、この出来事は、聖書の物語が現代に生きる人々の心に、いかに深く根付いているかを改めて浮き彫りにした。そして、自然が見せる荘厳な変化に対し、畏敬の念を抱くことの大切さを、静かに教えてくれているのかもしれない。
参考:Daily Mail Online、ほか
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