「老化は治療できる病」―1000年の寿命は人間をどう変えるか
一方で、生物医学的老年学者であり未来学者のオーブリー・デ・グレイ氏は、「老化は避けられない運命ではなく、治療可能な病だ」と断言する。彼は、2050年までに医療の進歩によって老化を克服できると予測しているのだ。
では、もし本当に1000年の寿命を手に入れたとしたら、私たちの人間性はどのように変化するのだろうか。「寿命が延びれば、人は野心や切迫感を失うのではないか?」というありふれた問いに対し、デ・グレイ氏はこう反論する。
「今の10代や20代の若者たちが、50年後に自分が死ぬという事実を意識して生きているわけではないでしょう」。人間のモチベーションは、単に死への恐怖から生まれるものではない、というのだ。
寿命1000年時代は、もはや単なるSFの夢物語ではなく、科学的な射程に入りつつある。しかし、その実現は、技術的なハードルを越えるだけでなく、私たちが社会のあり方や「人間とは何か」という根源的な問いにどう向き合うかにかかっている。
バラ色の未来の扉を開くのか、それとも新たな格差の地獄を生み出すのか。その分岐点に私たちは立っているのかもしれない。
参考:Popular Mechanics、ほか
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