隠蔽か、記憶違いか。終わらない論争
この看護師の物語は、UFO研究者と懐疑派の間で、今なお激しい論争の的となっている。
UFO研究者たちは、デニスの証言こそ、軍による大規模な隠蔽工作の決定的証拠だと主張する。墜落事件と時期が一致すること、軍が迅速に秘密裏に行動したこと、そして何より、証言に現れる看護師のリアルな恐怖が、その信憑性を裏付けていると彼らは考える。
一方、懐疑派は、デニスの証言の矛盾や、看護師の存在を裏付ける物的証拠が一切ないことを指摘する。歴史家カール・フロックは、この物語全体を「B級スリラー映画のようだ」と一蹴した。デニスが1990年代初頭からUFO現象に強い関心を持ち始めたこともあり、異なる事故の記憶が、彼の熱意によって脚色されたのではないかという見方が根強い。
70年経っても明かされぬ真実
この逸話は、1995年に世界中で放映され、後に制作者自身が「フェイク」だと認めた偽ドキュメンタリー『宇宙人解剖フィルム(エイリアン・オートプシー)』にも大きな影響を与えた。真偽はともかく、「ロズウェルの看護師」の物語は、エイリアンに関する私たちの集合的イメージを形作る上で、無視できない役割を果たしたのだ。
事件から70年以上が経過した今も、ロズウェルの看護師の正体は謎に包まれたままだ。公式な記録は何一つ、人間以外の遺体の発見を裏付けてはいない。しかし、デニスの物語は、真実とフィクションの境界が曖昧だった時代の空気を生々しく私たちに伝えてくれる。
いつの日か、機密文書の公開や、残骸とされる物体の分析が進めば、新たな光が当てられるかもしれない。それまで、ロズウェルの看護師のミステリーは、説明のつかないものに心を惹かれる私たちの好奇心を静かに刺激し続けるだろう。
参考:Popular Science、Wikipedia、A Different Perspective、ほか
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