トランプ関税と石破退陣を巡る政局は絡んでいます。米国に頼りすぎない経済構造への転換、安全保障政策の強化に日本は迫られています。対米問題への対応こそが日本の将来を左右します。石破氏を降ろしたとしても、その後、日本は国際社会の中でどのような立ち位置で生き延びていくのか、どのような国際連携を模索するのか議論が政界からは全く聞かれません。

与野党からトランプ批判の声なし

関税合意文書がなく、米国の発表が蛇行を続け、抜け落ちている部分、言い間違い、その訂正が続いています。政権にプロフェッショナル(専門家)がおらず、忠誠心と政治的意図だけは強く持った閣僚で構成されています。立憲民主党の野田代表は「合意内容を拡大解釈して、日本がぼられ続けるのでないか」と、石破首相に詰め寄りました。国民民主党の玉木代表は「合意文書を作らずにきたつけが噴出している。(内閣)不信任にも値する事態だ」と批判しました。

これらの野党は批判する相手を完全に間違えています。トランプ大統領は独裁者であり、独善的であり「議会を無視して議会の証人を得ず意向を押し付ける」、「戦後築かれてきた自由貿易体制を破壊している」、「中央銀行に押しかけて、パウェル議長に圧力をかける」、「労働統計が気にいらないといって担当局長を首にした」「関税政策を政治的道具に使っている」などの問題があります。

野党は米国に調査団でも出して、トランプ政権の実態を探ったらどうなのでしょう。対米交渉の当事者である石破政権は、トランプ批判を口にしにくいでしょう。交渉当事者ではない与党議員は声を大にして、トランプ氏の政策がいかに世界を危うくしているか声をだすべきでしょう。

外交政策は国内情勢に左右されます。米国は自身の統治に失敗し、そのつけを外国政策に廻しているとの批判が聞かれます。米国は最も経済的に豊かな国であるはずなのに、上位1%の富裕層が所得と富を独占し、貧しい中間層、低所得層の不満が鬱積しています。米国の内政の失敗が虚構な外交政策、関税政策を招いている。石破降ろしに懸命になるエネルギーをトランプ批判に回すべきなのです。