それからロンボク島では野生のインコが分布していますが、すぐ隣のバリ島にはいません。

対して、クマやトラ、サイのようなアジア原産の動物はオーストラリア区では見られません。

こうした動物相の違いは他にもたくさんありますが、ではウォレス線はどのようにして生じたのでしょうか?

大陸移動によるインドネシアの誕生

研究主任のアレックス・スキールズ(Alex Skeels)氏によると、その背景にはオーストラリア大陸の移動があるという。

「今から約3500万年前までオーストラリアはもっと南に位置し、南極大陸とつながっていました。

しかし、その後オーストラリアは南極大陸から分離し、数百万年かけて北上していき、アジアに衝突したと考えられます。

その衝撃によって、今日の私たちがインドネシアの名で知っている火山島が誕生したのです」

そして新たに生まれたインドネシアは、アジア〜オーストラリアの動物の移動を可能にする”飛び石”の役割を果たすようになりました。

今日のインドネシアの領土(緑)、ウォレス線(赤)
今日のインドネシアの領土(緑)、ウォレス線(赤) / Credit: ja.wikipedia

このように動物たちの移住と残留が進む中でウォレス線が次第に浮かび上がるようになりました。

しかし不思議なのは、アジアからオーストラリアに渡った動物種は多かったのに対し、オーストラリアからアジアに行く動物種はほとんどいなかったことです。

なぜこのような移住と残留の非対称性が生まれたのでしょうか?

研究チームはその疑問を「気候変動」の点から解答しました。

アジア出身が移住できて、オーストラリア出身が残留するワケは?

チームは今回、オーストラリア大陸の移動後に起こった気候変動のプロセスを復元し、さらに現在ウォレス線の周辺地域で記録されている約2万種の哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類の生態に関するデータセットを組み合わせました。

その結果、ウォレス線を境とした移住と残留の非対称性は「寒冷化」で説明しうることが示されたのです。