また、ウシの糞が密集して土の層を形成することで、大きな樹木が成長しづらいという特徴も観察してきました。

クラールだった場所は、サバンナの他の場所と比べて樹木が少なく、多種多様な草が生えている。
クラールだった場所は、サバンナの他の場所と比べて樹木が少なく、多種多様な草が生えている。 / Credit:Canva

こうした背景にあって、今回、セバタ氏ら研究チームは、これらのスポットを動物たちがどのように利用しているか調べることにしました。

彼らはアフリカのジンバブエにあるシャンガニ・ホリスティック牧場(Shangani Holistic Ranch)で、昔クラールが作られた4つのスポットを特定しました。

これらの土壌からは宝石、骨、陶器などが発見されており、クラールが作られたのは「およそ1800年前のアフリカ鉄器時代」だと推定されています。

そしてチームが土壌を分析したところ、周囲のサバンナの土壌よりもリンとカルシウムがより豊富に含まれていると判明しました。

これらの栄養素が多様性のある草の成長を促したと考えられます。

インパラ
インパラ / Credit:Canva

また、設置したカメラ映像を確認したところ、インパラやクーズーが、樹木が生い茂る周辺の地域よりも、かつてクラールがあったこれらスポットで草をよく食べていることが分かりました。

多種多様な草をたくさん食べることができるため、草食動物たちに人気だったのですね。

加えて研究チームによると、このスポットには「高い木が無く、草食動物が捕食者の接近を把握しやすい」というメリットもあるようです。

石器時代にクラールが作られた場所は、現代では「安心して食事を楽しめる憩いの地」へと変化していました。

クーズー
クーズー / Credit:Canva

今回の研究結果は、現代の問題を解決するのに役立つ可能性があります。。

ここ数十年でアフリカの開発は進んでおり、動物たちの貴重な餌場が失われています。

現代でも、もしかしたらクラールのように「ウシの糞を山積みにする」ことで、草食動物たちに新たな憩いの地を提供できるのかもしれません。