故郷を忘れないための“宇宙ドーム”

 この宇宙船で最も印象的なのが、船体後部に設置された高さ130メートルの「コスモス・ドーム」だ。ガラス張りのこのドームは、乗員が深宇宙の姿を直接目にできる唯一の場所となる。

 ドームは、常に旅の出発点である地球と太陽の方角を向いている。それは、船の中で一生を過ごし、惑星の地表に降り立つことのない世代が、自分たちのルーツである故郷を忘れないための重要な仕掛けなのだ。年に一度、全乗員がここに集い、円を描いて座る「全体会議」が開かれるという。

 審査員は、この設計の細部へのこだわりを高く評価した。特に、乗員候補を何十年もかけて南極の隔離基地で生活させ、心理的な適性を審査するという徹底した選抜プロセスに感銘を受けたという。「巨大なドームはSF映画のようなドラマ性を感じさせ、システム全体の計画性も際立っている」と、その完成度を絶賛した。

 一体、この壮大な宇宙船の建造にいくらかかるのかは、まだ誰にもわからない。しかし、「プロジェクト・ハイペリオン」は単なるデザインコンペではない。人類はいつか星々へ旅することができるのか、そして資源の限られた環境でどう生きるべきかを探る、壮大な思考実験でもある。クリサリスの設計図は、遠い未来への希望であると同時に、地球での私たちの未来を考える上でも、貴重なヒントを与えてくれるのかもしれない。

参考:Daily Mail Online、ほか

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