月の重力は地球の6分の1程度なので、打ち上げるのに必要なコストは大幅に削減されます。

月から放出された月レゴリスが、太陽の一部を遮る
月から放出された月レゴリスが、太陽の一部を遮る / Credit:Benjamin C. Bromley(The University of Utah)_Space dust as Earth’s sun shield(2023 Phys)

打ち上げられた月レゴリスは次第に散っていきますが、計算では1度の打ち上げで最大1週間ほど効果が持続するようです

そして大切なのは、打ち上げられた月レゴリスの軌道です。

研究チームは、様々な打ち上げ軌道をシミュレートした結果、「月レゴリスが太陽光を遮るのに効果的なルートを発見した」と述べています。

定期的に月からの打ち上げを続けるなら、散乱した月レゴリスは下記の軌道を繰り返し、ずっと太陽の一部を遮ってくれるでしょう。

月から打ち上げられる「月レゴリス」の軌道を地球から見た様子。太陽(円盤)を遮ってくれる。
月から打ち上げられる「月レゴリス」の軌道を地球から見た様子。太陽(円盤)を遮ってくれる。 / Credit:Benjamin C. Bromley(The University of Utah)et al., PLOS Climate(2023)

太陽光すべてが遮断されるわけではないため、特定の地域だけが極端に寒くなることはありません。

さらにこうした大規模な取り組みでは、「やりすぎで氷河期に突入するのでは?」といった懸念も生じます。

しかし今回のシナリオでは、デメリットだったはずの「継続期間の短さ」が、安全策として働きます。

仮に影響が大きすぎたとしても、打ち上げを繰り返さない限り、1週間経てば元通りになるのです。

それでも「月を爆破したり掘削したりする」というアイデアを実現させるのは、さすがに難しいでしょう。

研究チームもその点を認めており、今回の研究は「可能性を探ることが目的」だと述べています。

アイデア自体は暴論に思えますが、もしかすると、将来これにインスピレーションを受けた本当の解決策が誕生するのかもしれません。