海外企業が日本企業と取引する上でのハードル

 日本企業特有の傾向も、オフショア開発へのハードルを高めているという。

「海外企業からしてみると、日本企業と付き合うのは面倒くさいという側面があります。日本企業はシステムに関してなかなか意思決定できなかったり、権限を持ったCIOが不在のため最終決定権がボードになかったり、すり合わせ文化が根強かったりするので、取引する海外企業からすると、コミュニケーションコストが高いんです。システムに対するいい意味での割り切りのなさが目立ち、おもてなしを求めてしまうような面があるので、要件定義の部分が非常に面倒くさく、付き合っていくのは難易度が高いといえます。これはシステム以前の問題なので、外国の優秀なエンジニアであれば対処できるという話でもありません。

『どういう目的で何をいつまでに作るのか』をきちんと決められて、オーナーシップを持ってプロジェクトマネジメントできる海外の企業があれば、開発を委託したいと考える日本企業も増えてくるかもしれませんが、そのような海外の委託先企業が数多く存在していれば、日本のSIer業界やコンサル業界がここまで大きな存在にはなっていないいでしょう。あとは、すでに入っているかもしれませんが、大手コンサル会社の下請けとしてインドのシステム開発企業が多く入っていくというかたちはあり得るかもしれません。

 では、日本のSIerやSES会社をはじめとするシステム開発会社が非常に有利かといわれれば、そうは言いきれない部分もあります。海外企業と異なり日本のシステム開発会社は、発注先から無理を言われても、なんとか対応してしまう傾向もあるので、そういう点で選ばれやすいという面はあるかもしれません」

(文=BUSINESS JOURNAL編集部、協力=中野仁/AnityA代表)