さらに複数の「コロナ質量放出(CME)」が衝突・合体する様子までが捉えられ、これが宇宙天気の強度を増す要因となっていることもわかってきました。

こうした発見により、地球への影響をリアルタイムで予測する宇宙天気予報の精度が飛躍的に向上する可能性があります。

太陽風の「2つのタイプ」を観測

今回の接近飛行で明らかになったのは「太陽風が単なる恒常的な流れではない」という事実です。

これまでの観測では、太陽風は地球近くでは比較的安定しているように見えましたが、太陽に近づくほどにその様相は混沌としていました。

太陽風には2つのタイプがあり、ひとつは秒速約400kmの「高速風」。

もうひとつはその約半分の速度で流れる「低速風」です。

これまで、低速風の起源は曖昧で、どこから発生しているのか特定されていませんでした。

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近距離で撮影された太陽風/ Credt: NASA’s Parker Solar Probe Snaps Closest-Ever Images to Sun(2025)

しかしプローブの観測により、低速風には磁場の変動パターンが異なる2種類があることが確認されました。

ひとつは「アルヴェン型」と呼ばれる、小さなスイッチバック(磁場がジグザグに折れ曲がった変化)を含むタイプで、もうひとつは磁場の変動の少ない「非アルヴェン型」です。

とりわけ興味深いのは、この低速の太陽風が高速のものよりも2倍ほど密度が高く、地球への影響も時に「コロナ質量放出(CME)」並みに強くなることがあったことでした。

つまり、これまで見落とされてきた「静かな太陽風」が、実は私たちの生活に深く影響しているかもしれないのです。

科学者たちは、探査機が今後さらに太陽に接近していくことで、この低速風の正体や進化の仕組みを解明できると期待しています。

次回の近日点通過は2025年9月。さらに太陽の奥深くへの旅が続きます。

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