イエスの遺体を覆っていたといわれる通称「トリノの聖骸布」(伊語 サクラ・シンドーネ)について、ブラジルの研究者兼3Dデザイナーの新説が報じられた。いわく、聖骸布はイエスの遺体を覆っていたものではなく、単なる彫刻を包んでいたものだ、というのだ。

トリノの聖骸布のX線写真(バチカンニュース独語版2024 年8 月24 日から)

ガリレオ・ガリレイの時代と同じように、当然正しいと信じていた見解がひっくり返されるようなことが起きると、カトリック教会はパニックに陥る。その例にもれず、世界で最も有名な布「トリノの聖骸布」に関する最新の説にカトリック教会は大慌てとなっている。

新説は、デジタル3D顔面再構成などを専門とするデザイナー兼研究者のシセロ・モラエス氏が最近発表した研究結果だ。モラエス氏は、「トリノの聖骸布と遺物との接触部分で見えるのは、人間の遺体というより、浅浮き彫りの彫刻のようだ」というのだ。

「聖骸布」は1353年、フランスのリレで発見され、1453年にサヴォイ家の手に渡り、トリノに移動した後、1983年にサヴォイ家からローマ教皇に所有権が引き渡された。現在はトリノ大司教の管理下だ。

「トリノの聖骸布」と呼ばれる布は縦4.35メートル、横1.1メートルのリンネルだ。世界で最も研究されている考古学的遺物の一つである。全身に鞭打たれ磔刑に処された男性の痕跡が刻まれている。これが実際にイエス・キリストであるかどうかは議論の的となっている。その布の真偽についてはさまざまな情報があり、多種多様の科学的調査が行われてきた。最近、イタリアの研究者たちは特殊なX線技術を用いて聖骸布の糸の経年変化を分析し、約2000年前のキリストの時代に作られたと断定した。

1988年に実施された放射性炭素年代測定では、聖骸布の一部をサンプルとして取り、3つの異なる研究所で測定が実施された。その結果、「トリノの聖骸布」の製造時期は「1260年から1390年の間」という結果が出た。すなわち、イエスの遺体を包んだ布ではなく、中世時代の布というわけだ。その後、2013年に再度詳細に調査された結果、紀元前33年頃という年代が浮かび上がった。聖骸布に映る人物を詳細に調査した学者は「手、首、足には貫通した跡があった」と説明し、「遺体は180センチの男性だった」と指摘、「トリノの聖骸布は本物」と主張した。いずれにしても、DNA鑑定やコンピューター断層撮影装置(CT)を使用してこれまで徹底的に調査されてきた。