■長崎市の努力、世界平和に向けて
長崎市では、被爆の実相と平和への願いを国内外へ伝えるため、様々な事業を行なっている。
その例について、長崎市 平和推進課の担当者は「長崎平和宣言をはじめとした平和メッセージの発信や、被爆地訪問・視察の受入れ、音楽やスポーツなど自分の興味のある分野を入口に、身近なところから平和について考え、行動する当事者を増やしていくことで、平和の文化を市民社会に根付かせるための取組み(平和の新しい伝え方応援事業費補助金、『平和の文化』事業認定制度、平和の文化キャンペーン)、さらには、平和をつくる人材の育成(ナガサキ・ユース代表団)などを行なっています」と、語る。
そして、原爆により被爆した都市の使命として、被爆の実相と長崎市民の平和への願いを広く国の内外に伝え、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現に寄与するため、長崎市が設置した施設こそが「長崎原爆資料館」なのだ。

現在の長崎原爆資料館の建物は、被爆50周年記念事業として建替えを行い、1996年4月に開館したもの。常設展示室には、被害の痕跡を示す現物資料や遺品、被爆の惨状を示す写真など、約1,500点の資料を展示している。
直近となる2024年度の入館者数は81万825人で、これは前年度(2023年度)の入館者数75万8,753人と比較して、5万2,072人の増で、約6.9%の増である。
この数字は1997年の長崎原爆資料館開館直後の5年間を除くと、最大の入館者数となっており、入館者数が81万人を超えたのは2000年度以来、24年ぶりだという。
■「長崎を最後の被爆地にする」という決意

館内のWi-Fiパスワードが注目を集めた件について、長崎市 平和推進課の担当者は「今年は被爆から80年の節目の年です。戦後に生まれた世代が国民の多くを占めるようになり、戦争の記憶が私たちの社会から急速に失われつつあります。このような時だからこそ、被爆体験という原点に立ち返り、『原子雲の下で人間や街に何が起こったのか』という被爆の実相や、核兵器の非人道性をしっかり伝えていくことが改めて重要になっていると感じています」と、語る。
続けて、「長崎原爆資料館では、『世界中の誰にも、二度と同じ体験をさせてはならない』という決意のもと、『長崎を最後の被爆地に』するため、これからも核兵器がもたらす悲惨な結末を世界の人々に伝え続けてまいります。皆さまのご来館、心よりお待ちしております」とのコメントが得られた。

太平洋戦争の終戦から今年で80年を迎え、もう数年も経てば戦時下を生きた人の数もゼロになるだろう。そんな過渡期だからこそ、我われ日本人は改めて戦争の悲惨さ、そして原爆の恐ろしさを後世に、世界に伝えていかなければならない。