この広報設計は、単なる「PR」ではなく、議論の素材を提供する「公共的な情報インフラ」であり、国民が政策を自ら考えるための基礎環境となる。

感傷的言説の克服と論理的正統性の創出

現在の外国人労働者政策に関する議論では、左右両極から「行き過ぎた受け入れに反対」「人間にファーストもセカンドもない」といった、数的根拠の乏しい感傷的な言説が先行し、構造的な政策論が十分に届かない状態が続いている。

こうした言説に対抗し、制度設計に基づく合意形成を促すには、政府が責任をもって「数値・課題・手続の情報」を開示する広報構造を整備し、「国民の参加によって形成される合意」の場を提供することが重要である。これは、民主制度の新たなモデル構築とも言える。

広報制度の実装が意味するもの

以上のような広報制度設計は、外国人政策のみならず、他の社会的争点にも応用可能な「合意形成モデル」として機能する。これによって、選挙時の論点整理や政治判断の合理性も向上するだろう。

もちろん、制度の導入には政治的・実務的なコストが伴う。しかし、それは「政策への国民参加の制度化」という理念に照らして、十分に投資に値するものである。

追記(政治的フェアネスの観点から)

なお、外国人政策に関する司令塔機能の必要性については、日本維新の会が比較的早期から提言しており、2025年8月2日放送のテレビ番組において吉村代表も「我々が最初に言っていた」と言及している。本稿では制度設計の議論を主軸とするが、こうした発言の先行性にも敬意を払いたい。

・我が国の外国人労働者に関する諸課題 ・参院選の外国人政策:選挙報道における制度的視点の欠如 ・参院選の外国人政策:仮放免制度と強制送還 ・外国人労働政策に求められる制度的展開 ・外国人労働者政策:国政政党の政策論に求めること ・外国人労働者政策:司令塔機関に求められる視点