こうした技術を応用すれば、「目の再生に必要な遺伝子群」を網羅的に特定し、それを人間の幹細胞に導入して視力回復を目指す、といった未来の治療法にもつながる可能性があるのです。
もちろん、巻貝の目と人間の目は完全に同じではありません。
しかしpax6のように“再利用可能な遺伝子回路”が存在する以上、自然界が持つ多様な再生戦略を学ぶことで、人間の限界を超える手がかりが得られるかもしれません。
「目は失えば二度と戻らない」
そう信じられてきた常識が、今、巻貝によって覆されつつあります。
スクミリンゴガイは、複雑な目を1か月以内に再生するばかりか、その過程を制御する遺伝子が人間とも共通していることが明らかになりました。
そしてこの発見は、私たち人間にも「視力の再獲得」という新たな希望を与えています。
再生医療やバイオテクノロジーの発展とともに、私たちは「見えなくなった世界を再び見る」未来に、一歩ずつ近づいているのかもしれません。
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参考文献
This Snail’s Eyes Grow Back: Could They Help Humans do the Same?
https://www.ucdavis.edu/news/snails-eyes-grow-back-could-they-help-humans-do-same
Apple snails can regrow their eyeballs
https://www.popsci.com/science/eye-regeneration-apple-snails/
元論文
A genetically tractable non-vertebrate system to study complete camera-type eye regeneration
https://doi.org/10.1038/s41467-025-61681-6
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。